2023.02.22（水）

一生に一度は食べたい究極の焼き芋！タカラファーム齋藤さん

土が違うから、他の産地ではこの味にならない！

「行方のさつまいもがなぜおいしいかというと、この辺りは水捌けのいい赤土だからです。行方台地は起伏が激しく、何千年もの間に表層の黒土は下の方に流され、いい赤土だけが畑に残っているのです」と話すのは、農業をやりながら農産物直売所も営むタカラファームの齋藤辰雄さん。「親の代から続くうちの畑は10ヘクタールほどありますが、良質な赤土を利用してさつまいも、ごぼう、じゃがいも、にんじん、長ネギなどを栽培しています。起伏が激しいということは水捌けが良く、乾燥しやすいので根菜類の栽培に適しているのです」

よく寝るさつまいもは、甘〜く育つ！？

「野菜は採れたてのほうが新鮮でおいしいのですが、収穫直後の“掘りたて”のさつまいもは実は甘くありません。10月頃から収穫をはじめるのですが、“キュアリング”という処理をして倉庫で熟成させ、年明け頃から出荷をはじめます」と齋藤さん。キュアリングとは、30℃くらいの蒸気を当て、さつまいも表面にコルク層という薄い膜を作り、収穫時にできた細かな傷から雑菌が入らないようにする処理だという。「さつまいもはキュアリング処理、温度管理、熟成期間が重要です。キュアリング倉庫は13℃くらいに温度設定していますが、さつまいもは収穫後も呼吸を続けているので、呼吸熱によって温度が上がり過ぎないよう、3月頃からは冷蔵庫を稼働させて温度を下げます。掘ってからすぐに出荷するのではなく、甘くなるまで熟成させてから市場に出荷しているのは、この地域だけだと思います」

さつまいもを抱え話をする斎藤さん

さつまいもの歴史を変えた品種“紅はるか”

今でこそ行方市内の農家でたくさん生産されている紅はるかだが、5年ほど前は全く見向きもされなかったそう。「さつまいもブーム、焼き芋ブームが来る前は『紅はるかなんて・・・』と言われるほど、どの農家も栽培に消極的でした。干し芋も玉豊（たまゆたか）という品種が一番だと言われていたのですが、今は紅はるかに切り替わってきています。焼き芋は調理方法がシンプルなので、素材そのものの甘みが重要です。長期間熟成させてもそこまで甘くならない品種もありますが、紅はるかは熟成させるほどねっとりした甘さになります。このさつまいもが今のブームを牽引し、新しい歴史を作ったと言っても過言ではない品種です」と振り返る。

焼いて冷凍すると極上のスイーツに変身！

「以前、千葉に遊びに行ったとき、道端でお婆さんが壷焼きの焼き芋を販売していました。ホクホクした紅こまちという品種ですが、食べたら甘くておいしかったのです。さつまいもを栽培するだけでなく焼き芋にしてみたいと思うようになり、この直売所で販売をはじめました。うちの焼き芋を買って食べた静岡や栃木の焼き芋屋さんが、『ここの焼き芋は甘くておいしい』とさつまいもを買い付けに来ることもあります」と笑う。「焼き芋のままでも十分甘いのですが、冷凍するとさらに甘みが増してクリーミーになります。アイスクリームのような食感も楽しめ、焼き芋とはまた違う味わいを楽しめますよ」と齋藤さん。

30年にたった1度しか生まれない奇跡

「さつまいもは何百種類ある中から、味、形、色の三拍子揃ったものでないと市場に出回ることはありません。県の農業試験場でも色々な種芋を交配していますが、紅はるかのような品種は、30年に1つくらいしか生まれてきません。さつまいもは植えてから130日ほどで収穫しますが、乱れないものがいいです。乱れないとは、形が良くて真っ直ぐ。大きくなり過ぎず、同じサイズのものが採れることです。最近は栗かぐや、すずほっくりという新しい品種も出てきています。昔はホクホク系が好まれていましたが、今はねっとり系が人気です。時代が変われば人気の食味や食感も変わってくるので、新しい品種の栽培に挑戦し、究極の焼き芋を追い求めたいと思います」

農産物直売所タカラファーム

・住所	茨城県行方市玉造甲4027-7
・電話	0299-55-3535
・営業時間	9:00〜18:00

齋藤辰雄（株式会社タカラファーム代表取締役）

茨城県行方市出身。農業学校を卒業後、実家の農業を継ぎ、10ヘクタールの畑で根菜類を中心に栽培している。2021年4月には農産物直売所「タカラファーム」を開き、熟成したさつまいもや地元農家から届く農産品を販売する傍ら、究極の焼き芋作りに挑戦している。