2023.02.22(水)

さつまいも一本でここまでやる!?さつまいもをおいしく届けるJAなめがたしおさいのこだわり。なめがたしおさい農業協同組合

さつまいも一本でここまでやる!?さつまいもをおいしく届けるJAなめがたしおさいのこだわり。なめがたしおさい農業協同組合

地形そのものが違うから、他では絶対に作れない!

行方市(なめがたし)は農産物の生産が盛んな場所で、茨城県内では一番の販売額を誇ります。なかでも「行方かんしょ」と呼ばれるさつまいもは年間約2万トンが生産されています。霞ヶ浦と北浦という二つの湖に挟まれているため土地そのものは狭いのですが、馬の背のように湖に向かって傾斜しているため水捌けがよく、このような地形でさつまいも栽培をしているところは他にはありません。スーパーでさつまいもを買うとき、大きなもの、形の良いものを選ぶ方が多いと思います。市場では「選果選別色形状」といわれ、農産物は色や形で評価されがちですが、私たちは色や形ではなく味で評価されるよう、さまざまな情報を提示することで付加価値を付けてきました。

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えっ?収穫したらすぐに出荷…しない!?

行方にはキュアリング倉庫というさつまいもを長期間貯蔵できる場所があり、行方で生産される4分の1のさつまいも約5000トンをJAで貯蔵しています。「キュア」とは英語のCURE(治療)のことで、収穫したさつまいもを室に入れて蒸気を当ててサウナ状態にし、傷口を殺菌して長期保存できるようにします。さらに、温度と湿度が一定の定温倉庫で貯蔵し、でん粉が糖に変わり甘くなるのを待ってから出荷します。冬はヒーター、夏は冷房を付けるなど(さつまいもが土の中にいる状態を保ち、ストレスのない環境で熟成できるよう)徹底した温度管理をしています。秋になると農家から多くのさつまいもが運び込まれますが、JAでは畑ごとにさつまいもを分析し、その特性を地図上にマッピングしています。時間と手間がかかる情報収集ですが、農家と協力しながらこのような地道な活動を行い、おいしいさつまいもを全国にお届けしています。

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小貫莉奈さんとJA職員の方とキュアリング倉庫を望む

想像を絶する甘さ、メロンを超える糖度38度!

「うちのさつまいもが一番おいしい」と、皆さんおっしゃいますが、どれだけおいしいのか、どれだけ甘いのかということを数値化して客観的なデータとして伝えることが大切です。たとえばメロンの糖度は17〜18度くらいありますが、行方のさつまいもは熟成させることで糖度38度くらいになります。それほど甘いのです。おいしいか否かというのは、一度で判断されてしまいます。たまたま食べた1本がおいしくなければ、もうそこの産地からは買わないでしょう。ですから、作るだけ、箱に詰めて出荷するだけではなく、生産者、流通、JAが目線を揃えて、「消費者に届く、その1本のさつまいも」に情熱を注いでいます。

さつまいも一本でここまでやる!?さつまいもをおいしく届けるJAなめがたしおさいのこだわり。なめがたしおさい農業協同組合

さつまいもに付いている黒いのは、汚れじゃない!

さつまいもをもっと手軽に食べてもらうにはどうしたらいいか。私たちが辿り着いたのが焼き芋だったのです。焼き芋は今でこそ大ブームになっていますが、20年ほど前に電気で焼ける焼き芋器をメーカーと開発し、全国のスーパーに置いてもらう取り組みを始めました。手軽に買えることから爆発的に売れるようになり、大きな量販店での導入も進みました。現在は、海外の販路を拡大すべく挑戦していますが、さつまいもを送るだけでなく、さまざまな情報と一緒に送る必要があります。たとえば、さつまいもの切り口などに付いている黒いもの。これは汚れではなく、「ヤラピン」という成分で整腸作用があります。正しい情報やデータも提供しなければ、海外でも「これは汚れている」と捨てられてしまうのです。

さつまいも一本でここまでやる!?さつまいもをおいしく届けるJAなめがたしおさいのこだわり。なめがたしおさい農業協同組合

GI認証取得で「行方かんしょ」を一大ブランドに!

以前は収穫した生のさつまいものみを販売していましたが、焼き芋や冷凍焼き芋をはじめ、現在は食品加工を中心とする6次産業化を推進し、かりんとう、アイスクリーム、芋焼酎、ビール開発などに挑戦しています。また、ブランド力を上げるために、農林水産省の地理的表示保護制度(GI認証)の取得も目指しています。これは、栽培の歴史、取り組み、地域性なども含めてブランド化するもので、「行方かんしょ」というブランド名で申請中です。この地域のさつまいもが全国、そして世界に羽ばたき輝くことで、もっとさつまいもに興味を持ってもらい、「さつまいも栽培に挑戦してみたい!」「さつまいもを使ってこんな商品を開発してみたい!」という若い方が増えると、行方がさらに活気にあふれるのではないかと思っています。

金田 富夫(なめがたしおさい農業協同組合 代表理事 専務)

茨城県行方市出身。農家の長男として生まれ、行方のJAで営農の仕事に従事。2022年3月より役員。現在は、なめがたしおさい農業協同組合で代表理事 専務を務め、地元農家とともに農業の持続・継続のための取り組みを模索。日本の農業を国内・世界に発信している。

河野 隆徳(なめがたしおさい農業協同組合 営農経済部 部長)

茨城県行方市出身。高校を卒業後、茨城県鹿嶋市の会社に1年間勤務。その後、地元に戻り行方のJAで営農関連の仕事に40年間従事する。現在は、なめがたしおさい農業協同組合の営農経済部審議役部長として、さつまいもを中心とする行方の農業の発展に情熱を注ぐ。