2024.02.14(水)

行方かんしょがいつでも甘くて美味しいのには理由があった!さつまいもを守る「キュアリング」とは!?

行方かんしょがいつでも甘くて美味しいのには理由があった!さつまいもを守る「キュアリング」とは!?

「さつまいも」と聞いて、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか?ほくほくとした食感や甘い香り、秋の味覚を思い起こす方も多いのではないでしょうか?しかし、実はさつまいもがそのまま美味しくなるまでには、ひと手間加える必要があるんです!今回は、さつまいもがおいしさのピークに達するための秘密のプロセス、「キュアリング」をご紹介します。

年間約2万トンものさつまいもを生産している行方市。行方産のさつまいもは「行方かんしょ」と呼ばれ、通年で美味しい焼き芋を味わえることから全国にその名が広まってきています。しかし、さつまいもの旬と言えば普通は秋や冬を思い浮かべます。なぜ、行方かんしょは春や夏でも甘くて美味しい焼き芋を提供できるのでしょうか?今回は、JAなめがたしおさいの野原さんに、「キュアリング」という技術について詳しく伺いました。

ずばり、キュアリングとは

今回お話をうかがったのは、年間約2万トンものさつまいもを生産している茨城県行方市のさつまいも農家さんを支える、JAなめがたしおさいの野原さんです。

行方かんしょがいつでも甘くて美味しいのには理由があった!さつまいもを守る「キュアリング」とは!?

野原さん
「キュアリングを簡単に説明すると、さつまいもを収穫した時にできる目に見えないような小さな傷口を塞ぐ治療を行っています。傷を治すことで長い期間貯蔵できるようになり、そのおかげで甘くてしっとりした味へと変わっていくという点が大事なポイントです」

行方かんしょがいつでも甘くて美味しいのには理由があった!さつまいもを守る「キュアリング」とは!?

具体的には、掘り上げた芋を土がついたまま4日間貯蔵するのですが、貯蔵庫を室温32℃、湿度90%以上にしておく必要があるそうです。その後取り出し、急激に冷やされることで表面上にコルク層が出来上がるのだとか。

キュアリング処理を終えたさつまいもは、定温・低湿貯蔵庫でじっくりと保管され、少しずつ甘みを蓄えて出荷の日を迎えます。

行方かんしょがいつでも甘くて美味しいのには理由があった!さつまいもを守る「キュアリング」とは!?

さつまいもを貯蔵する施設

キュアリングをしないとどうなるの?

収穫してすぐの秋口には、キュアリング処理を行っていない、掘り取りしてすぐの状態のさつまいもを出荷しているそうですが、キュアリングしないままのさつまいもを長い期間貯蔵しておくとどうなってしまうのでしょうか。

「キュアリングをしないと、さつまいもの傷口から雑菌などが侵入してしまいます。これによって傷んだり、カビが生えたり、寒さに弱くなってしまうんです。仮に雑菌が付着していたとしても、キュアリングによってできる何層ものコルク層によって雑菌がそれ以上中に侵入できなくなるんですよ」

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キュアリングのメリット

「先ほども少しお話しましたが、キュアリングによるメリットは大きく分けて2つあります。『1年を通じて安定的に出荷できる』ことと、『食味が向上する』という点です。キュアリングによって腐ってしまったり病気になってしまうさつまいもが減り、計画的な出荷が叶うようになりました。また味に関してはキュアリングをする=甘くなるのではなく、キュアリングによって長期貯蔵が可能になり、そのおかげで自然に甘くなるというものです」

キュアリングは掘り上げてからキュアリング処理を始めるまでの時間が短いほど効果的になるそうです。JAなめがたしおさい管内の農家さんは、さつまいもを掘り上げた日にJAへ持ち込み、すぐにキュアリングできる仕組みになっているため、非常に高い効果を得られているのだとか。

行方かんしょがいつでも甘くて美味しいのには理由があった!さつまいもを守る「キュアリング」とは!?

キュアリング貯蔵庫について丁寧にご説明いただきました。

自宅でもキュアリングをできるの?

キュアリングについて知り尽くしている野原さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。
例えば家庭菜園で自ら作ったさつまいもを、自宅でキュアリング処理することは可能なのでしょうか?

「今まで家でキュアリングをしようと考えたことがなかったですが、徹底した温度・湿度管理と、急激に冷やす行程と、その後長期保存するための一定条件に適した保管場所が必要になるので、なかなか難しいかもしれませんね。サウナのような環境などそれぞれ用意できるのであれば、チャレンジしてみると面白そうです」

キュアリングこそ行方かんしょの強み

野原さん「キュアリングの仕組みを理解して、マニュアルを作成し運用しているのは恐らく私たちだけだと思います。規模や設備の問題で、キュアリングをやりたくても実施できていない産地もある中で、私たちほど徹底的に管理して常に美味しい状態のさつまいもを提供できることは大きな強みだと思っています」

2023年には「行方かんしょ」が地理的表示(GI)保護制度へ登録されましたが、その条件の中に「12月から全量キュアリング処理」が含まれており、まさに他では真似のできない特徴となっています。キュアリングという手間を掛けることで、いつ食べても甘くて美味しいという行方かんしょの魅力が保たれているのです。