2025.03.10(月)

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

こんにちは。「365日焼き芋を食べる熱波師」天谷窓大(あまや そうた)です。

焼き芋とサウナ、一見関係がないように見える2つの領域ですが、意外な共通点があるのでは──。そんな疑問をふと抱き、検証するシリーズ。今回はこちらの疑問を検証してみようと思います。

「サウナでおいしい焼き芋は作れるのか?」

サウナと焼き芋、意外な3つの「共通点」

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

サウナの熱源は、200〜300℃に熱したサウナストーンと呼ばれる石。玄武岩(げんぶがん)や花崗岩(かこうがん)などが使われています。これらは「火成岩」と呼ばれるマグマが冷え固まった石が中心。加熱が伝わりやすく、熱伝導に優れているのが特徴です。

ちなみに石焼き芋に使われる石は、黒丸石(くろまるいし)、黒玉石(くろたまいし)など、河川の堆積砂を元とする密度の高い石が中心。その一方で、お芋に合わせた火の通りを志向し、安山岩(あんざんがん)などの火成岩が使われるケースも見受けられます。
「石を焼いて熱する」というところでは、焼き芋もサウナも、メカニズムは同じと言えそう。

さらにもう一つ、焼き芋とサウナの意外な共通点があります。それは「温度」。
さつまいもが「焼き芋」になり、甘くなるのは、お芋の中に含まれるアミラーゼという酵素がデンプンを糖に変えるため。このアミラーゼがもっとも効率よく働くのは65℃〜80℃とされています。
これ、サウナで「ととのい」と呼ばれる開放感を感じられる体感温度とほぼ一致しているのです。

ちなみにサウナで血流が良くなると、腕に赤い斑点のような模様が浮かび上がることがあり、この状態を「あまみ」と呼びます。

温度帯の話と合わせると、こう言えるのではないでしょうか。

「人もお芋も、サウナで『あまみ』ができるのでは?!」

……御託はこのあたりにして、さっそく実験しましょう!

いろんな場所をサウナにするプロ集団「花岡工務店」さん

訪れたのは、ものづくりの街として有名な大阪・摂津(せっつ)市にある「花岡(はなおか)工務店」。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

大阪府摂津市の花岡工務店

東海道新幹線の高架沿いという素敵な立地にあり、新大阪方面の列車に乗車すると、京都駅を出て10分ほどしたところで進行方向左手の車窓から見ることができます。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

新幹線の車窓から見た花岡工務店

そんな花岡工務店、地域密着型の工務店として関西一円の木造新築、リフォームをメインとしながら、建築の技術をフル活用してユニークなオーダーサウナづくりに取り組んでいます。

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2024年にオーダーサウナ事業をスタートし、これまでに手掛けたサウナは15件。運送屋さんのバンをまるごと改装したサウナカーや、ピックアップトラックの荷台を活かした大型バレルサウナなど、見た目にもインパクトたっぷりのユニークなサウナを続々と作り上げています。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)
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サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)
サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

資材はほぼ全て自社での手作り。凹凸型に切り出した木材を組み合わせるなど、工務店として積み重ねたノウハウを惜しみなく投入することにより、頑丈で長持ちするサウナを作り出しています。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)
サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

今回の実験には、花岡工務店の花岡雅仁社長と、山中宜明さん、乾秀樹さんにご協力をいただきました。平日、通常営業中にも関わらず「サウナで焼き芋?! 面白いですね!」と面白がっていただき、お仕事の合間をぬって多々サポートをいただきました。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

左から花岡工務店の山中宜明さん、花岡雅仁社長、乾秀樹さん

花岡社長いわく、花岡工務店のコンセプトは「関西一の”キカクガイ”な工務店」。「野球チームのように、得意分野を持ついろんな人と力を合わせて楽しく仕事をする」をモットーに、業種に関わらず幅広い分野の経験者の方々を採用し、従来の枠組みにとらわれないユニークな事業を幅広く展開しています。

ちなみに山中さんの前職は紳士服メーカーの店舗責任者、乾さんの前職は消防士。自宅の工事を依頼するなど、花岡工務店とかねてからつながりがあったことがきっかけとなり、ともに働く仲間になったのだそうです。「人柄がよければ未経験者でも大歓迎」と花岡社長。伺った当日も、笑い声の絶えない社内で、とても幸せそうにお仕事をされていたのが印象的でした。

探究心旺盛で、とにかく温かい花岡工務店のみなさんとチャレンジする「サウナ焼き芋」。果たしてどんな味に仕上がるのでしょうか……!

超強力な薪式サウナヒーターで焼き芋を作る

今回の実験の舞台は、花岡工務店の手掛ける車載式サウナ「HAKO CETERA(ハコセトラ)」。軽トラックの荷台部分に「バレルサウナ」と呼ばれる樽型の木造サウナが据え付けられています。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)
サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

2畳ほどのサウナ室内に設置されているのは、サウナの本場・フィンランド産の薪式サウナヒーター「Harvia(ハルヴィア)」です。山中さんいわく「本来はこの倍くらいの空間で使うサウナヒーター」だそう。つまり実質、通常の2倍のパワーで熱を放出するとも言えます。これは期待できそう!

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サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

実験に使用するのは、行方産の紅はるか。流通シーズンの終わりごろに入手したこともあり、お芋の中でも特に大きな「2Lサイズ」です。通常、このサイズを石焼きにすると中までじっくり火を通すのに2〜3時間はかかるのですが、はたして……。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

今回はサウナ室の2ヶ所にお芋を設置します。1つはサウナヒーターに積まれたサウナストーンの上。もう1つはサウナのベンチ部分に置き、実際に人がサウナに入っているのと同じ環境下で焼き芋ができるかどうかを実験してみようと思います。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)
サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

焼き芋の焼け具合は、お芋の中心温度で測定することに。センサー部分が針状になった食品温度計を約10分の間隔でお芋に突き刺し、その変化を見ていきます。

サウナストーンで熱したお芋は「予想外」の結果に!

さて、いよいよ実験開始!
山中さんがサウナヒーターに薪をくべていきます。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

ごうごうと音を立てて燃える炎。サウナ室の温度はぐんぐん上がり、さっそく額に汗が浮かび始めます。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

スタート時点のお芋の温度は、サウナヒーター上が23℃、ベンチ上が26℃。ベンチ上のほうが若干温度が高いのが意外ですが、どちらもアミラーゼが起動する65℃〜80℃にはまだまだです。はたしてここからどのくらいのペースで温度が上昇していくのでしょうか。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)
サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

<実験開始10分後>
サウナヒーター上のお芋は50℃。なかなかいいペースですが、お芋はまだ全然硬い、温度計の針は力を入れないと中まで刺さりません。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

ベンチ上のお芋は31℃と、ちょっと温まったくらい。もちろんこちらもまだ全然お芋は硬い状態です。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

普通の焼き芋もこんなに早くは出来ないので、このあたりは想定内。気長に待つことにします。

<実験開始20分後>
サウナヒーター上のお芋の温度が80℃に達しました。理論上はアミラーゼが起動し、糖化が始まっている状態。お芋の外側が少し柔らかくなりはじめ、先ほどよりも温度計の針がスムーズに刺さるようになってきました。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

一方、ベンチ上のお芋は33℃。あまり温度は上がっていません。暖かい空気は上に溜まりやすく、サウナ室内の中でも場所によって温度差が生まれているのがわかります。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

まぁ、あと30分くらいしないと明確な違いは出てこないかな、と思っていたのですが……

<実験開始30分後>
なんとここで予想外の事態! サウナヒーター上のお芋の温度が突如急上昇し、いきなり114℃を指したのです!

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

アミラーゼは80℃を超えると失活する性質があります。美味しい、トロトロの焼き芋を作るためには、糖化のベスト温度帯である65℃〜80℃近辺をいかに保つかが重要。これを超えているということは、成功にしろ失敗にしろ、すでにアミラーゼが働きを終えていることを意味します。

最高の効率でアミラーゼが作用し、糖化できたのか。それともアミラーゼが効く前に温度が上がってしまったのか……。ここで失敗していたら、早くも実験不成立という結果になってしまいます。祈る気持ちで温度計をさらに深く差し込んでみると……

柔らかい!!!

これまではグリグリと押し入れなければ入らなかった針が、スルスルとお芋に入っていきます。まさに「竹串がスッと入る」あの感覚です。これは、もしや……!

ドキドキする気持ちを押さえながら、お芋全体が十分に熱せられたかどうかを見極めるため、もうちょっと熱してみることに。これで硬さが変わっていなければ、すでに糖化は止まっていると判断できます。といいつつ、これで焦げてしまったらすべてが台無し。せっかく実験を行ったからには、美味しい焼き芋が食べたい……!

<実験開始40分後>
成功か、失敗か。どちらにしても、その結果がより極端に出る段階となりました。
成功していてくれ……!

温度計の針を刺すと……

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

一瞬で貫通!!
もはや力すらいらず、ちょっと指先でつついただけで、針がお芋を貫通するほどにお芋が柔らかくなっていました。
温度は132℃! オーブンで焼き芋を焼きあげたときの温度くらいです。

そしてサウナ室の中には、心なしか甘く香ばしい香りが……。
これはもしかして、もしかするのでは?!

サウナストーン上に置いたお芋を下ろして、中身を確認します。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

山中さんにお芋を持ってもらい、割ってみると……

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

おおおお〜!!!!!!! しっかり焼き芋ができている!!!!

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

中までしっかり火が通り、ばっちり糖化した中身。
蜜がキラキラと光り、栗きんとんのようにトロトロになっています。
あたりには栗のような甘〜い香り。
これは予想以上の仕上がりです!

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

「ハフハフ…… これはすごい!!! 本当に栗きんとんを食べているみたい!!」と山中さん。「こんなに甘い焼き芋、生まれて初めて食べましたよ!!」と大絶賛です。

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

私も一口食べてみると、とろ〜りなめらかな舌触りとともに、口の中いっぱいに濃厚な甘さが広がりました。これは間違いなく大成功!!! それも、想像以上の美味しさです!

サウナでおいしい焼き芋が作れる? 挑戦したら驚きの結果に!(前編)

くと、なんと通常の3倍近くも速いスピードで、濃厚トロトロな味に仕上がることがわかりました。

【実験結果(1)サウナストーンで焼き芋を焼くと美味しく仕上がる!しかも通常の3倍の速さで!】

まずは嬉しい結果が出て、一安心。
ですが実験はまだまだ終わっていません。
残るは、ベンチ部分に置いたお芋。こちらはどうなっているのでしょうか。

気になる結果は、後編の記事で……!

取材協力:花岡工務店
大阪府摂津市新在家2-1-19
https://www.8702bld.com/